卒業生への言葉-卒業式の祝辞に代えて(令和3年度)

修学院小学校を卒業する6年生のみなさんへ

おじさんは、へそまがりです。

へそまがりだから、スーツを着るのが嫌いです。人生でスーツを着たのは10回もないんじゃないでしょうか。そんなわけで、今日はみなさんの卒業式だというのに、赤いパーカーを着てやってきました。変な大人がいるなあと思ったことでしょう。すみません。でも、やっぱりスーツを着るのが嫌なのです。

今年度の入学式でもスーツは着ませんでした。周りの大人の人からは「こういう時はちゃんとした格好をするものだ」とチクチク言われました。チクチク言われるのは気分がいいわけがないですよね。だからネクタイくらい締めてきた方が楽なのはわかってます。それでもやっぱり、スーツを着るのは嫌なんです。

さて、みなさんは小学校での6年間を終了し、本日卒業していきます。卒業した後は、中学校に行くことでしょう。中学校を卒業したら(気が早いですね)、高校に行く人もいるし、すぐに働き始める人もいます。高校に行っても、その後大学に行く人も、働き始める人もいる。大学に行っても、卒業をしたらやっぱり働き始めたり、それ以外の道に進んだりするでしょう。つまり、どんどん大人に近づいていくということです。

学校に行くというのは、大人になるための準備をする期間ということかもしれません。大人は、結構大変ですよ。だからその時のために、いろいろなことを学びます。少なくともあと3年間。多い人はあと10年以上学校に行きます。その中で、みなさんはいろいろなことを「普通に」できるようになれと言われるでしょう。「みんなができることを、あなたもやりなさい。」「そんな変わったことをしてて将来どうする。」とか、いろいろな形で「普通」を求められます。身近な人からも言われるでしょう。

だけど、人間には個性というものがあります。個性というのは、誰とも違う、自分だけの特徴というものです。大人は、個性を伸ばせと言いながら、同時に普通にしなさいと言ったりします。自分の個性に気がついて、それを大切にしようと思っていたのに、普通にしろと言われます。

そんな時は、ちゃんと考えてみてください。

自分のやりたいことと、周りが言う「普通」と。それが違っているのであれば、本当に大切なのは何なのかを、ちゃんと考えてください。大人にはそれなりの経験があるので、自分の成功したことや失敗したことなどをもとにして、子どもたちには失敗しないようにと願って、それで「普通」にできるようになれと言うのです。その言葉には重みがあります。なぜそんなことを大人が言うのかを、ちゃんと考えてください。大抵の場合は、その言葉の意味を知ったら、従っていた方がいいなあという場合が多いです。

しかし、ちゃんと考えて、それでも自分の考えが正しいと本気で思える時は、それを貫くことも大切です。

「普通」であるということは、いってみれば楽なことです。チクチク言われることもなくなります。普通に生きていたって人生はそこそこ大変です。普通じゃない生き方をすれば、それは少数派になるということですから、大変さは増していきます。そのことはちゃんと理解しておいた方がいいでしょう。

それでもなお、自分の考えが正しいと思える時。周囲の声に従っていたのでは自分がダメになると本気で思える時。そういう時は、自分を貫く勇気を持ってください。普通の選択をした場合の大変さと、普通じゃない選択をした場合の大変さ。そのどちらが自分にとってマシなのか。そういうのもひとつの判断基準になるかもしれません。

ほとんど多くの人たちは、そんな勇気など持たなくても普通に生きていくことができますし、その「普通」は決して恥ずかしいものではありません。そういう人も、友達が普通じゃない選択をしたことを知ったら、その普通じゃない選択をした友達を理解して、受け入れてあげてください。「普通じゃない」ことだって、恥ずかしいものではないのです。

もしもあなたや、あなたの友達が、周囲の声とは違う普通じゃない選択をしようとした時、選択をしなきゃならなくなった時、今日の卒業式で赤いパーカーを着たPTA会長がいたということを思い出してもらえれば幸いです。それ以外の時は、思い出さなくても構いません。

へそまがりというのは、自分以外の人がみた言葉です。あなたが周囲からどんなにへそまがりに見られたとしても、自分から見た自分の心には、どうか真っ直ぐでいてください。みなさんのこれからの人生が、真っ直ぐで、楽しくて、有意義なものになることを心からお祈りしています。

令和3年度 修学院小学校PTA会長 大島栄二